第1回開催 企画部門グランプリ

アカリ・トモス・ユビサキ

西野つぐみ(日本)

作品概要

まるで世界中がいっぺんに停電になったように、ある日突然世界から灯りが無くなります。夜目覚めた「キミ」は自分の指が「灯りを点す魔法」を使える事に気づき、そして迷子で暗闇におびえる子猫「たれすけ」を見つけます。キミは「灯りを点せる指」を使って道にある街灯を指で一つずつ点していったり、灯りの付いたランタンを指で動かして迷路を進んだり、怖がりの「たれすけ」を何とか灯りで導いて、お母さんの元へと連れて行くストーリーです。タブレット端末の特性を生かし、タッチによって子どもたちが物語に参加できます。子どもたちが自ら、怖がりの子猫を導いていくことで、「人を助ける喜び」「他者の面倒を見る大切さ」を学ぶこともできます。

受賞コメント

このような素晴らしい賞がいただけて感激しております。ありがとうございました。この作品の一番の特徴は「読者が主人公になれる」ことです。
従来の紙の本は、読者は主人公に感情移入しながら物語を読みます。ですがこの「アカリ・トモス・ユビサキ」は、デジタルならではの仕掛けを作り、物語を読んでいる子どもたち1人ひとりが物語に直接参加します。子供達は、物語の中の子猫とお友達になって、仲間と助け合いながらいっしょに物語を体験していくのです。その過程で勇気や絆の素晴らしさを伝えられればと思っています。家族みんなで楽しんでいただけるように、頑張って完成させたいと思います。

審査員コメント

デジタルえほんには、温かさが必要だと思う。デジタルというと冷たい印象があるが、その「固定観念」を破る試みが必要である。西野つぐみさんの『アカリ・トモス・ユビサキ』の企画は、とてもよくできていた。暗闇の中、こわくてふるえている猫を自分の指であかりを灯して導くという発想がいいし、途中で出てくるキャラクターたちも魅力的である。ストーリーにも起承転結のドラマがあり、実際に製作されたものを見たいと強く思った。あかりを灯すのは本当は私たちの心で、指は心の出先機関である。こういう作品が出てくることで、デジタルのイメージも変わって行くのだろうと思う。(脳科学者:茂木健一郎様)